乳酸

乳酸(にゅうさん、lactic acid)は、有機化合物で、ヒドロキシ酸の1種である。分子式 C3H6O3、示性式 CH3CH(OH)COOH、IUPAC置換命名法 2-ヒドロキシプロパン酸 (2-hydroxypropanoic acid) と表される。ただし、キラル中心を1つ持つため鏡像異性体が存在するので、R体かS体かの区別が必要な場合がある。乳酸の塩やエステルは ラクタート あるいは ラクテート(lactate)と呼ぶ。解糖系の生成物として現れる。

乳酸の代謝

L-乳酸は解糖系の生成物のひとつである。急激な運動を行うと筋肉の細胞内でエネルギー源として糖が分解されピルビン酸を経て乳酸が蓄積する。

乳酸の筋肉疲労との関わり

カエルの筋肉を使った研究に基づき 1929年に Hill らが提唱して以来、乳酸は筋肉疲労の原因物質として考えられてきた。
これは、乳酸の蓄積によるアシドーシスにより収縮タンパクの機能が阻害されたためと理解された。しかし後の研究において、アシドーシスを筋肉疲労の原因とする説に対して反証が報告されてきた。そして2001年に Nielsen らによって、細胞外に蓄積したカリウムイオン K+ が筋肉疲労の鍵物質であることが報告された。Nielsen らの系では、K+ の添加により弱められた筋標本について乳酸などの酸を添加すると、従来の説とは逆に回復がみられた。2004年の Pedersen らの報告でも、pH が小さいときに塩化物イオンの細胞透過性が落ちることが示され、アシドーシスに筋肉疲労を防ぐ作用があることが示唆された。また、強度の高い運動ではATPやクレアチンリン酸の分解でリン酸が蓄積する。このリン酸はカルシウムと結合しやすく、カルシウムがリン酸と結合してしまうと筋収縮に必須のカルシウムの働きが悪くなる。これが疲労の原因の一つと考えられている。カルシウムは本来筋小胞体に貯められ、筋小胞体から出ることで筋肉は収縮し、筋小胞体に戻れば筋肉は弛緩する(『フリー百科事典 ウィキペディア』より引用